サントリー美術館の懐は広かった 展示編


昨日に引き続き、サントリー美術館 展示編です。
現在行われてる展示は
サントリー美術館開館記念展「日本を祝う」
3月30日〜6月3日
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/index.html
「祥」「花」「祭」「宴」「調」をテーマにサントリー美術館コレクションの中から選りすぐりの作品を展示するというもの。実は最初は「期待はずれなのでは・・・」という思いで出かけて行ったのですが、これが行ってみたら嬉しい予想外で、サントリー美術館の懐、実は広かった・・疑ってごめんねサントリー、でした。

展示は屏風絵、絵画、絵巻、陶器、ガラス器、衣装、染め物、など収蔵は多岐に渡り、興味深い作品ばかりでした。
スペースそのものはそんなに広くないものの、隈氏のセンスの成せる技なのでしょうか、展示室もライティングから空間の取り方など、非常にゆったりとしていて観やすく、それが作品をより良く見せているように思われました。

行ってみて気が付いたのですが、会期の長いこの展示は3回に分かれて展示替えがあるそうで、私が行ったのはすでに2期目の終わりだったのでした。
狩野探幽の屏風絵が非常に観たかったのですが、今回はなく、はたして3期目にこれが展示されるのか・・・。とはいえ二期目の雲谷等璠作「孔雀図屏風」も見応えある素晴らしい作品でした。右に対の孔雀、左には三羽の白孔雀が配され紅白の花々と切り取られた樹々の構図が絶妙のバランスをかもしだしていました。日本の屏風絵の構図の切り方、空間の使い方をみていると、改めてこの金箔をあしらった美しい豪華なスクリーンは先人達にとって「屏風とは一つの『異界への窓』」だったのではないかと思わずにいられません。

そして現代の私も彼らと同じ風景を楽しめることに幸せを感じるのでした。その他にも興味深いもの多数ありました。
概要編でもふれました、伊万里焼きにて造られたオランダ人とオランダ船が描かれた「色絵五艘船文独楽形大鉢」美しい伊万里焼きの菊の文様をあしらった地模様にユーモラスなイラストチックなオランダ人やオランダ船が描かれてます。18世紀頃の作品です。
この頃の日本人にとって南蛮人達は豪華で珍しい物をもたらしてくれる福の神であり、またその船は宝船であったそうです。紋章を模した牡丹の花の図案も人物もとってもセンスがよくって「和」芸術一辺倒の時代にこの絵がかけるなんてちょっとすごい・・と感動しきりでした。

江戸後期に造られたコウモリをデザインした「切子藍色船形鉢」もデザイン性の優れた一品でした。

薩摩切子はわずか20年足らずで栄えて滅んでしまったそうで、かなり貴重な品と思われます。コウモリが黄金バットのように羽を広げたモチーフで船形の一端に、その対には巴紋が。みようによってはコウモリが惑星を抱えているようにも見えます。コウモリはその音より古来から中国では「福」を呼ぶ吉祥だったのだとか。コウモリにそんなポジティブなイメージがあったとは知りませんでした。

能衣装には美しい刺繍がほどこされ、その構図はそのまま掛け軸になりそうな素晴らしさでした。基本的には同じモチーフが描かれているのですが、その手間ひまだけでなく絵画的にも優れた作品でウィリアムモリスよりも刺繍プレミアムもプラスされてこちらの方が私は好きでした。

とてもユニークだったのは16世紀桃山時代の「鼠草子絵巻」という絵巻物です。

「鼠の権頭は人間の姫君と結婚して子孫を畜生道からすくおうとする。けれども結局は婚礼後、姫君に鼠であることがばれてしまい、破局を迎え姫にはにげられてしまう。権頭はショックを受け高野山に出家する。」という御伽草子でユーモラスなその話は当時は大流行したそうです。
絵巻の中に直接マンガのように人物名やセリフが書き込まれています。一部しか紹介されておらず、全部みたい!と思っていたら、なんとミュージアムショップに絵本化されて全容が売り出されてました。かゆいところに手が届く・・・がしかし、図録が重すぎて買うのは断念。今後もチェックしておきたい一品です。
(写真はねずみの権頭、人間の姫君と結婚の巻、セリフがかいてあります)

「三十三間堂通し屋図屏風」17世紀頃のこの作品では当時、堂裏の縁側にて南から北端までの120メートルを24時間で何本射通せるかをきそった祭り事がえがかれています。射手のみならず、その裏方達、後ろで茶をたてるもの、弓矢の用意をするもの、射手側、的側にそれぞれいる紅白の今で言うボンボンのような物をもったチアガール&ボーイ?が描かれていてとても興味深かったです。今週末京都にいくのですが、ぜひ三十三間堂の西の縁側、行ってみなければと思いました。


(三十三間堂通し屋の図、右上に射手が左下に紅白のボンボン隊)

などなど音声ガイドがあるので楽しさも倍増でたのしめた展示でした。

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