<匈奴族の鷹形金冠飾り>
「匈奴の王冠の優品。金製で鷹は狼が羊に噛みつく半円の場面を
見下ろし、額の部分は虎と野生羊と馬が伏せた姿の浮き彫りと
縄索文で飾られてた美しい冠。」
*以下本ブログの画像全て主催者に許可をとり撮影したものです
先日、江戸東京博物館にて開催されている
「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」のプレスビューに
参加させていただきました。
「モンゴルの至宝」と聞いても長い時代において遊牧騎馬民族
により形成されてきた国土にどのような手工業品が発展して
いったのかそもそもの知識不足により、はずかしながら想像が
あまりつきませんでした。
展覧会はチンギスハーン出現以前の時代とチンギスハーンがおこした
モンゴル帝国時代、そしてハーンの子孫フビライが起こした元王朝が
その後衰え滅んだ後、清の支配下に置かた時代の大きく3つに
分かれています。時代背景などみてゆくと国家の移り変わりが手工芸品
に現れていて興味深いかと思います。
まずは上記王冠を含むハーン以前の部族のものを紹介します。
<東胡族の青銅製馬面飾り>
「東胡族の青銅製馬面飾りの完全な1セットで、人面形の馬面飾り
はどことなくユーモラスな顔立ち。この時代日本はまだ弥生時代!」
<鮮卑族 金製鹿頭形冠飾り>
「鮮卑の貴族が用いた冠飾り。角の先に下げられた金製の
葉がふれあう音だすことによって身分の高さを表したのだ
そう。東洋というより西洋を思わせる美しいフォルムです」
盤の中央に鹿の浮き彫りがあり、モチーフは草原文化の特徴を色こく
とどめている美しい銀製の皿。中原文化と北方の遊牧文化が融合した
実例なのだそう。ちなみに日本はこの頃古墳時代!!
・・・といえば卑弥呼の青銅の皿?by鹿男あおによし」
<契丹族 黄金のマスク>
「皇女の婿の顔に被せてあったもの。皇女と共に埋葬されていたようで、
二人とも美しい装飾品に身をつつんでいました。マスクは神々しい
雰囲気を放ってました。銀製のブーツも美しいです。」
モンゴル高原という場所はチンギスハーン以前までは東胡族、匈奴族、
鮮卑族、突厥族、契丹族などいくつもの遊牧の部族たちが次々と支配部族
となっては姿を消してゆく歴史を繰り返しておりました。
ですが、チンギスハーンが歴史の舞台に登場しモンゴル高原に帝国を形成
してから後はモンゴル族が歴史を育くみ続けてきたのです。
そして清の支配下に置かれて後、近代に入り、外モンゴルは
モンゴル共和国として独立、内モンゴルは中華人民共和国、
内モンゴル自治区となりました。今回の展示の出展はこの内モンゴル
自治区博物院よりの品々となります。
展覧会を通してみて思ったのは展示品は良い意味で私の想像の域を
超えていた。というこです。
それらは多種多様の文化の要素を含み、東洋と西洋との盛んな交流
がそこでおこなわれていたのだということを実感させるものでした。
特にモンゴル帝国の時代に入ってからはユーラシア大陸にまで
勢力を拡大した帝国がアジアからヨーロッパにまたがる史上最大規模の
国家を発展させたことにより、激しい文化と人の交流が起こり益々
手工芸品も華やかさと多様さを増して行きました。
とここでチンギス・ハーン出現以降、元の時代の多岐に富む
品々を紹介します。
<元代 狩猟文岩画>
「黒い石上に一番上に太陽を配し、人や動物が一面に刻まれ
ています。騎馬で遊牧をする人や弓を引こうとする人、
山羊、野生羊、猟犬、鹿など多くの動物も刻まれています。
まるで古代文明を連想させるような牧歌的な作品です。」
<イスラーム教徒の石棺の蓋>
「石前側面には祈りの言葉や死者の姓名、年齢などを
彫るのだそうで、上部にはアラビア文字でアッラー神への
言葉が書かれています。おそらくは連れてこられたであろう
イスラムの人々の思いはどのようなものであったでしょう」
<元代 銅鍍金菩薩像>
「銅に鍍金した金銅の菩薩像で元代において仏教が尊ばれた
ことを示す元代仏像中の逸品とのこと。」
イスラームの美しい石棺が出て来たと思えば仏像の逸品、
これぞまさに異文化交流!元の時代の文化の多様性の
現れと言えましょう。
それにしても遊牧民族なわけだし・・やっぱり文化の伝承や製造に
まつわる疑問というのは残ります。というわけでそこのところを
調べてみました。
それによると、モンゴルの遊牧民独自のものとしては、
遊牧に不可欠な移動式住居のゲルや車、鞍などの馬具、弓矢などの狩猟や
戦いに必要な武器類、将棋や馬頭琴など、生活に即したものなどは
彼らによって造られたのだそうです。ですがやぱり、手工芸品の
発達はあまりみらず、職人もあまり多くはなかったそうです。
まぁ確かに、それどころじゃないですよね・・生活(遊牧、狩猟)第一!
ですがさすがそこは大陸つながり、彼らはユーラシア大陸の広い交易
により手工芸品そのものを輸入したり、さらには捕虜などとして連れて
こられた職人達に必要なものを造らせたりしたのだそうです。なるほど!
必然的に作品には彼らの国の文化、好みが反映されることとなり、
今回展示品に観たような、見るからに異国風のものや、東西文化の
融合した美しい工芸品などが現在に残されているということなのでした。
イスラームの人もこのうちの一人・・ですね。
そして清の支配が及ぶ時代に入ります・・・
<清代 龍が彫ってある王座>
「背もたれとその下に龍と雲の豪華な浮き彫りが施され、
手すりは鹿の角、イスの足は龍の足と頭を模している
芸術的な逸品!これが「出土した」とあったのですが、
土に埋もれていたとは到底思えない美しさです。」
<清朝 銀鍍金翠鳥羽飾り鳳冠>
「カワセミの羽で飾った14羽の鳳凰と9つの牡丹で飾られている非常に
美しい冠。これなどは今でも中国の地方民族の方がしてそうな雰囲気
を醸し出してます。同じエリアには美しい民族衣装も展示されてました」
<清代 大威徳金剛の面>
「紙製で牛の頭の形に漆彩色を施された2本角と5つの
頭蓋骨、3つの目を持つインド、チベット仏教に於ける
護法神です。これなどはちょっと現代アートの域に入ってる
逸品だと個人的には萌えな品です。
そして最後に
<清代 銅鍍金金明王像>
「古代インドでは軍神、戦神で護法神のリーダー。やはり3つの目
5つのどくろを額に持っている。小さいながら美しく神々しい明王像」
この時代のモンゴルはインド、チベット仏教の影響を思わせる
品々が数多く見受けられました。会場には金粉で黒字の紙に
チベット語で書かれた経本が展示されておりました。経の両サイド
には極彩色の絵が描かれている非常に美しい「ガンジョール」です。
今回江戸東京博物館にて展示されてる品物は「至宝」の名にふさわしく
国宝54点を含んでいます。モンゴルの至宝・・というかある意味
ユーラシア大陸文化大集合的なこの展覧会、混合的な大陸文化を
一度に楽しめるよい機会ではないでしょうか。
「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」
江戸東京博物館
2010.2.2(火)〜4.11(日)
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/index.html