もうすぐ個展が始まります。
これから会えるであろうたくさんの皆様との出会い
を楽しみにしつつ、今、いろいろと準備に追われる
日々を送ってます。
個展の時に必ず何人かの方に聞かれることがあります。
「銅版画って・・・なんですか?」と。
確かに、学校の美術の時間などで少しドライポイントを
経験した方はいても、多くの皆様にとってはあまり想像
しづらいものですよね。
「銅に刷るんですか?」と聞かれたことも・・。
今日は銅版画の工程の一部「刷り」の段階をちょとご紹介します。
よく知られている銅版画のイメージは黒一色ですが、私が比較的
多用してるのは一般多色刷り(一枚の版にたくさんの色を置いて、
一度で刷る)という方法です。
<版の溝にしっかりインクが詰まるよう色を詰めてゆきます>
これを人絹と呼ばれる布や紙、あるいは手などを使ってなるべく
素早く拭き取って行きます。
<拭き取り終わった版はこんな感じに・・>
この版は雁皮(ガンピ)と呼ばれる和紙に刷るので、ここで
水バットにこの版を沈め、同じく水にい沈めたガンピを版の上に
定着させます。水気を布で拭き取って、刷毛でノリをつけ
更に水分を拭き取とります。
(*今回の刷りは雁皮刷りと呼ばれる刷り方ですが、全ての
版がこの方法で刷られてるわけではありません。
直接紙にすることもよくあります)
<水バットの中でガンピを乗せて水を切っている状態です。>
*ガンピとは、そもそもうすーい紙です。身近な例えで言うと
脂とり紙のような感じです。それを水にしずめると色味はやや
あるものの、かなり透明に近い感じになります。画面でも良ーく
見ると銅板の上に同サイズのガンピが乗っているのがわかります。
ここまできたらいよいよ刷ります。
私はハーネミューレというドイツの紙を使っています。
この紙もしばらく水につけておきます。それを吸い取り紙で
水分をとってから銅版と共にプレス機セット。
<プレス機を回してそっと紙をもちあげます。この瞬間が一番
ドキドキと同時にワクワクする瞬間です。うまく刷れてますように!>
大丈夫、うまくすれてました。
銅版画は一回で一枚しか刷れません。もう一枚刷りたい時には
インク詰めの作業をまた一から始めます。この版のように大きい
もので多色だと工房の開いてる時間内では私の場合色数が多いので、
一日1枚しか刷れません。
<刷り上がりはこんな感じ。ガンピが乗っているのでなんとなく
きなりな空気感のある仕上がりになっています。>
刷り上がった作品を水張りテープで板に貼り、うえからロール紙を
かぶせます。
最後は灯油やガソリンでインクを落とします。
一仕事おえて、さあまた明日もう一枚!
こんな感じで銅版画の作品を刷って行きます。
この刷りの工程の前に版を作り込んで行く工程があります。
500年前からやっていることはほぼ変わっていないという
アナログな銅版画。
それでも制作していると自身日々新しい発見があります。
技法も多岐にとび、作家の表現で同じ技法でも違う表情をみせます。
いわば作家であると同時に職人でなければならず、
それだけにもっとこうありたい、という思いにも駆られるわけで、
そこがまた魅力でもあるのでした。